凍結結晶送付によるメールイン・リモート実験の実施、微小結晶、ルーチン結晶構造解析データ収集
SPring-8構造生物学ビームラインでは高難度試料を含めた自動回折データ収集システム開発の進展により、利用者が来所することなくデータ取集可能な遠隔実験が可能となっている。従来より支援を行ってきたWEBデータベースによる実験条件の指定や結果の閲覧が可能なメールイン測定[1]、実験室よりビームライン制御端末へ接続してデータ収集を行うリモート測定[2]の利用支援の他、微小結晶解析を目的に開発された自動データ収集システムZOO[3]を利用したデータ収集の利用が可能である。利用者の負担を減らしビームラインの利用を簡便にすることにより、膨大な数の試料を取り扱う高難度微小結晶解析や、創薬における化合物スクリーニングの効率的な実施への適用が期待される。 3種の実験形態をサポート 1)メールイン・データ収集 → WEBデータベースとオペレータ介助による実験代行 2)遠隔実験 → 利用者自身で柔軟かつリアルタイムに実験 3) メールイン・データ収集 → ZOOによる自動データ収集
(参考) [1] Okazaki et al., Journal of Synchrotron Radiation 15 (2008), 288-291. [2] Ueno G., et al., AIP Conference Proc eedings 1741 (2016), 050021. [3] Hirata, K., et al., Acta Cryst. D75 (2019), 138-150.
本研究ではメールインデータ収集による結晶試料のスクリーニング、および回折データ収集を実施し、脳機能に必要なIP3受容体の構造解析を行った結果、リガンドの結合を引き金に起こるリーフレット部を介した構造変化に伴う、カルシウムチャネルの開閉機構が明らかになった。
(参考)“IP3-mediated gating mechanism of the IP3 receptor revealed by mutagenesis and X-ray crystallography”, Hamada K., et al., PNAS (2017) 114, 4661-4666.
放射光を利用したタンパク質結晶解析(PX)ビームラインの自動化の推進や利用環境共通化のための開発・高度化を通じ、より効率的な利用及び新規測定法提供に向けた測定装置及びソフトウェア開発を進めている。今後は創薬開発等の支援に向けた薬剤複合体構造解析の自動化を目指している。
(参考) [4] Ueno G., et al., Journal of Synchrotron Radiation 12 (2005), 380-384. [5] Murakami H., et al., Journal of Applied Crystallography 45 (2012), 234-238. [6] Ueno G., et al., Journal of Structural and Functional Genomics 7 (2007), 15-22.