動物を対象にしたヒット化合物の薬物動態解析
生体試料中におけるヒット化合物の高感度検出法を構築し、疾患モデルの対象となるマウス・ラットを用いてヒット化合物の体内動態解析を行う。得られたデータからバイオアベイラビリティと体内蓄積性を評価し、至適投与量と至適投与法の提案を行う。
動物を対象にしたヒット化合物の薬物動態解析 疾患モデル動物を用いたヒット化合物及び既承認薬の体内動態解析。 [References] EBioMedicine 13:262-273. 2016. Mol Pharmacol 88: 29-37, 2015. Mol Pharmacol 85: 715-722, 2014. J Biol Chem 289: 25296-25305, 2014. J Biol Chem 287: 35669-35677, 2012. J Biol Chem 287:17224-17231, 2012. Hepatology 48: 240-251, 2008. Gastroenterology 135: 1636-1644, 2008.
一般に、薬の効果は作用部位における「薬物への感受性」と、その部位における「薬物の濃度」によって規定されるが、病巣部位へ薬の移行や速さは吸収・分布・代謝・排泄の各素過程によって制御される。ヒトにおける薬物の体内動態に服用時刻による違いがあることは知られていたが、その制御メカニズムは未解明であった。我々は培養ヒト肝細胞を用いた実験において、薬物代謝酵素であるシトクロムP450の発現や活性が時計遺伝子のはたらきによって概日リズムを示す機構を明らかにした。また、トランスポーターも薬物の体内動態制御に関わる重要な因子であるが、動物を用いた基礎実験において、消化管や腎臓でのトランスポーターの輸送能も時計遺伝子の制御によって概日リズムを示すことを明らかにするとともに、消化管での薬物吸収に関わるトランスポーターの概日リズムの制御メカニズムの解明にも成功した。 さらに、製薬企業と共同でサルを用いた研究を実施し、マウス・ラットなどの夜行性動物と昼行性動物における概日リズム制御機構の種差を明らかにした。サルはヒトと同じ昼行性動物であり、シトクロムP450や薬物輸送トランスポーターをコードする遺伝子は両種間で高い相同性を示すことから、得られたデータをもとにヒトにおける至適投薬タイミングの設定が可能になることが期待される。