創薬に直結するヒト膜タンパク質の立体構造解析に向け、独自の発現・精製・結晶化技術で取り組む
創薬に直結するヒト膜タンパク質の立体構造解析に向け、独自の発現・精製・結晶化技術で取り組んでおります。具体的な技術は以下の3点です。
[P型ATPaseに関する研究] P型イオンポンプタンパク質はATPの化学エネルギーを利用し、ナトリウム・カルシウム等の陽イオンを能動輸送する、きわめて重要な分子である。これまでにSERCAをはじめNa+,K+-ATPaseの結晶構造を発表し、Nature誌等に報告している。また、独自の発現・精製系の構築により、変異体の結晶構造解析や生体内からの精製が不可能な分子の解析も行っている。能動輸送の構造的解明を目指し、結晶構造解析に取り組んでいる。 [GCase受容体に関する研究] 血圧・体液バランスの維持に不可欠な心房性利尿ペプチド(ANP)受容体に代表されるグアニル酸シクラーゼ(Gcase)受容体を対象に、生化学実験とX線結晶解析とを組み合わせ、受容体がホルモンを認識しシグナルを伝達する機構の解明を目指している。心筋梗塞等の創薬などの社会的要請にも応えることが可能である。 [リアノジン受容体に関する研究] リアノジン受容体(RyR)は筋小胞体の巨大なCa2+遊離チャネルであり、骨格筋及び心筋の興奮収縮連関において中心的な役割を果たす。RyR1の変異は筋疾患と、RyR2の変異は不整脈性心疾患と関連する。これまでに多くの変異の機能解析を行って疾患の発症機構を解明してきており、創薬へ向けた薬物探索も進めている。近年クライオ電験による近原子分解能の構造が報告されているが、不明瞭な部分も多く、その構造活性相関・疾患の理解・薬剤の作用機序の理解には程遠い。現在、独自の超巨大膜タンパク質を発現する系により構造決定に取り組んでいる。