膜タンパク質複合体のクライオ電子顕微鏡用試料調製法の技術開発
クライオ電子顕微鏡用試料(グリッド)作製において、膜タンパク質複合体の精製標品に含まれる界面活性剤の除去法のほか、多様な膜タンパク質複合体に対応したグリッド作製法を探索している。例えばGraDeR(Gradient based Detergent Removal)はグリセロールの密度濃度勾配超遠心法を用いたフリーの界面活性剤ミセルを除く手法である(Hauer and Gerle et al., Structure 23, 1769-1775(2015))。最近ではナノディスク、amphipolといった手法も手掛けている。
膜タンパク質複合体の高分解能単粒子解析
グリッド作製の最適化から、膜タンパク質複合体といった難易度の高い試料のクライオ電子顕微鏡による高分解能単粒子解析を目指している。特にギャップ結合チャネルのinnexinやconnexinを中心とした対称性の高い膜タンパク質複合体を中心に、複数の試料調製法を用いて構造解析に取り組んでいる(Oshima et al., Nat. Commun. 7, 13681 (2016))。線虫に存在するギャップ結合チャネルinnexin-6は、可溶化状態とナノディスク再構成状態で構造解析に成功している。
哺乳動物細胞による大量発現系を用いて、プロトンポンプH+,K+-ATPaseの構造研究をX線や電子線を用いて行っている。特にX線結晶構造解析から、H+,K+-ATPaseがどのようにして胃の中にpH 1という強酸性溶液を作り出しているかが理解できた (Abe et al., Nature 556, 214-218 (2018))。