シリアルフェムト秒結晶構造解析。放射線損傷の影響を受けない常温での構造解析。フェムト秒時間分解能も可能な時分割実験。
X線自由電子レーザーを用いたシリアルフェムト秒結晶構造解析では、a)放射線損傷の影響を受けることなく常温での構造を得ることや、b)フェムト秒~ピコ秒といった時間分解能でも時分割実験が可能であることが特徴である。
シリアルフェムト秒結晶構造解析のイメージ図
バクテリオロドプシンの時分割実験のために開発した装置システムを用いて、光化学系IIの反応中間体状態の構造を明らかにした。
光化学系IIの反応中間体状態の構造。 Suga M. et al.Nature,543, 131-135(2017)
2012年半ばよりX線自由電子レーザー施設SACLAと協力し、医学や薬学に重要であるタンパク質を迅速にかつ高分解能で構造決定する技術を確立することを目指してきた。さらに、現在、時分割実験の装置システムや手法の開発に取り組み、タンパク質が機能する過程の構造変化を捉える技術の汎用化を検討している。
SACLAにおけるシリアルフェムト秒結晶構造解析の装置システムの一つ。写真の中央にヘリウムチャンバー、その中に結晶輸送装置(インジェクター)、右側にマルチポートCCD検出器。写真の左側からX線自由電子レーザーを導入。
シリアルフェムト秒結晶構造解析法を用いたバクテリオロドプシンの時分割実験(左)とその解析結果(右)のイメージ図。黄色の矢印がX線自由電子レーザー、緑色の矢印が励起のためのポンプ光(532nm)。励起光照射後、ナノ秒からミリ秒にかけて13点の時間の測定に成功、バクテリオロドプシンのプロトン移動の構造変化を動画のように捉えることができた。Nango E. et al. Science, 354,1552-1557(2016)