主に酵母を用いた遺伝学的アプローチを通じて薬剤や生理活性物質の標的分子を同定する
標的分子が不明な薬剤や生理活性物質の標的分子の同定を支援する。薬剤標的分子の同定は、1)プローブなどを用いて直接相互作用する分子を同定する手法、2)似た表現型を示す薬剤から標的分子や標的カスケードを絞り込み、同定する方法、3)薬剤耐性変異株などを取得し、耐性遺伝子を遺伝学的に同定することを通じて同定する方法、の3つの方法に大きく分類される。それぞれの手法には利点・欠点があるため、随時組み合わせを行うことも多い。本支援では、主に遺伝学的アプローチを中心に薬剤標的分子の同定を支援する。
薬剤排出ポンプとその転写因子をコードする12遺伝子を破壊することで、多剤超感受性になった出芽酵母、12geneΔHSR株を親株に、抗ウイルス活性及び抗腫瘍活性を示すユーディストミンCの生体内標的の同定に成功した。
化合物ライブラリー等を用いた表現型スクリーニング、及び表現型スクリーニングから見出されたヒット化合物の標的分子同定を行ってきた。 1)遺伝学的アプローチによる標的分子の同定 薬剤排出ポンプとその転写因子をコードする12遺伝子を破壊することで、多剤超感受性になった出芽酵母を作製し、さらに胞子形成能を向上させることにより遺伝学的解析の効率を上げた12geneΔHSR株を作成した。この株は様々な薬剤に対して野生株の4倍以上の感受性を示す多剤超感受性株である。さらに栄養条件によって遺伝学的解析手法が応用可能な状態と、さらに薬剤透過性を上げた状態とをスイッチできる12geneΔHSR-iERG株も作成している。これらの株は表現型スクリーニングに有用であるとともに(J. Nat. Prod., 81, 1604 (2018), J. Antibiot., 71, 1031 (2018), J. Antibiot., 72, 645 (2019))、顕性(優性)耐性株からの耐性遺伝子の同定を通じて、遺伝学的アプローチによる薬剤標的分子の同定に用いている(Chembiochem, 17, 1616 (2016))。 2)表現型解析による標的分子の同定 動物細胞に対し形態的変化を始めとする特徴的な表現型を誘導する化合物の標的分子同定を行ってきた。