対象は可溶性・膜タンパク質(及び複合体)の大規模結晶化スクリーニング、結晶化事前性状評価(膜タンパク質耐熱化予測など)
代表者の加藤は、ロボティクスの専門家の平木博士(高エネ機構、機械工学センター)との共同研究で全自動結晶化ロボットの開発と高度化を行い、また、高エネ機構の放射光ビームラインスタッフとの連携で、X線回折実験の自動化なども進めてきた。 構造生物学的研究としては、翻訳後修飾に関連するタンパク質群について研究を行い、ユビキチン、脂質、糖鎖の認識や代謝に関わるタンパク質群をその主な対象としてきた。最近では、筋ジストロフィーの原因タンパク質で糖代謝に関わる POMGnT1 の立体構造を明らかにした(PNAS 113, 9280-, 2016)。また近年、感染症や抗体についての構造生物学研究の展開も図っている。 分担者の村田は、創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業において、管教授(静岡県立大学)らと共同で開発したNative-PAGE法(CN-PAGE法:特許第5213967号)を応用し、膜タンパク質の単分散性や熱安定性を簡便に調べる方法を確立した。さらに、木下教授(京都大学)らと共同で統計熱力学理論計算を用いた膜タンパク質の耐熱化変異体予測法(エントロピー基盤法:特願2014-130560号;WO2015/1991621A1)を開発した。これらの開発技術を支援に活用し、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)などの重要な創薬標的膜タンパク質の耐熱化に成功し、これらの新規結晶構造解析を進めている。 タンパク質の形や大きさ、表面電荷の分布などがさまざまであるため、その結晶化条件は一定ではなく、さまざまな条件を試してX線回折実験に適した結晶を得る必要がある。そのためには、数多くの結晶化条件の検討が必要で、サンプルの調製と結晶化条件探索そのものの双方の点で膨大な手間を要する。より少ない結晶化条件で求める結晶が得る事が出来れば、その改善になり立体構造解析自体のスループットの向上に大きく寄与する。そのため結晶化を促進するタグの開発や試薬の探索が行われてきたが、特定の条件で有効なものも一般性のあるものはなかった。分担者の姚は、新しい発想に基づいた結晶化促進試薬の開発を行い、複数のテストサンプルでその有効性を示した