マクロライド系化合物・窒素/酸素を含む多環性骨格・特異な官能基配置を有する構造単位の合成・変換反応の実施/提案
特異な化学構造と顕著な生物活性を有する天然有機化合物の効率的な全合成ルートの開拓と構造活性相関について研究を進めている。これまでにpaspalinine(痙攣作用)をはじめとする数種の生物活性インドールジテルペン類やdelitschiapyrone A(細胞毒性)などの多環式天然物の全合成を実現した。前者においては、隣接する四級炭素構造の高立体選択的構築法とγ-ヒドロキシエノン構造の汎用的構築法を開発した。後者においては、予想生合成ルートに立脚したDiels-Alder反応による左右フラグメントの連結とα-ケトール転位および分子内ヘミアセタール化を水溶媒中で一挙に進行させることに成功し、市販原料からわずか7工程、通算収率32%の効率的全合成を達成した。 現在は、主な合成標的として、sinensilactam A(Smad3リン酸化阻害活性)、actinoallolide A(抗トリパノソーマ活性)とamycolamicin(抗菌活性)の全合成に取り組んでおり,sinensilactam Aについては生合成ルートに立脚した短工程での四環性縮環構造構築法の開拓、actinoallolide Aについては歪みのかかったTHF環内包型12員環マクロライド構造の構築法の開発、amycolamicinについては二種類の新規単糖の合成法および各構造ユニットの効率的連結法の開発を実現して、効率的な全合成を達成する。