D5-4 疾患モデルでの解析（循環器疾患モデルでの解析）

循環器疾患モデルマウスの作製、心循環機能評価

[1] 支援担当者

[2] 支援技術の概要

循環器疾患モデルマウスの作成と心循環機能評価

疾患モデルマウス：心不全（心筋梗塞、大動脈狭窄、薬剤誘発性）、閉塞性動脈硬化症、糖尿病、高血圧、悪液質、筋萎縮性側索硬化症

心循環機能評価：左心室収縮力測定、末梢表面血流量測定、運動機能測定、筋重量測定、組織形態観察

血液・尿パラメータ計測：酸化／還元ストレスなど

[3] 支援技術の利用例

各種筋不全疾患モデルマウスの作製と薬効解析
マウス心不全や筋萎縮性疾患、閉塞性動脈硬化症、糖尿病、高血圧を対象とした既承認薬の適応拡大（エコファーマ）研究及び創薬研究。
遺伝子改変による難治性筋萎縮性疾患モデルマウスの作製と薬効解析
遺伝子改変技術を駆使して筋萎縮性疾患モデルマウスを作出し、既承認薬を中心に薬効評価を行う。
　[References]
　　Nishimura A et al., Sci. Signal. 11, eaat5185 (2018)
　　Shimauchi T et al., JCI Insight. Aug 3;2(15). pii: 93358 (2017)
　　Nishimura A et al., Sci Signal 9(411): ra7 (2016)

[4] 支援担当者の研究概要

全身の血液循環は心筋・血管平滑筋・骨格筋によって制御されており、筋肉の恒常性維持こそが健康寿命を延ばす重要な因子となる。我々は筋肉細胞に共通する細胞恒常性維持機構に着目し、細胞膜上に存在するカチオンチャネルTRPC3が筋肉の過度な伸展ストレスによって誘発される活性酸素の生成を仲介し、心臓の硬化（線維化）を引き起こすことを明らかにした。また、TRPC3チャネルを抑制することで抗がん剤誘発性の心筋萎縮や心不全も抑制されることを最近明らかにしており、本メカニズムが筋肉の病的可塑性に共通する機構であることを明らかにしつつある。

一方、環境中から取り込まれる様々な化学物質やストレス仲介因子による心血管リスク増悪作用の原因がミトコンドリアの過剰分裂にあることを明らかにし、その根底には親電子物質とその代謝・消去を担う内因性求核物質（活性硫黄）とのバランス破綻があることを見いだした。活性硫黄はミトコンドリア分裂促進タンパク質Drp1のシステイン側鎖に含まれており、これが親電子物質により引き抜かれ枯渇することでミトコンドリアの過剰分裂が起こることも明らかにしている。さらに、これを選択的に抑制する既承認薬（シルニジピン）の同定にも成功している。