B1-1 SPring-8高難度タンパク質結晶構造解析

タンパク質微小結晶を利用したスクリーニング・データ収集。自動データ収集システムZOOを利用した微小結晶・ルーチン結晶構造解析データ収集

[1] 支援担当者

[2] 支援技術の概要

特にSPring-8構造生物学挿入光源ビームラインでは膜タンパク質の微小結晶を用いた高分解能構造解析を中心とした高難度試料からのデータ収集に特化した高フラックス微小ビームの利用を実現してきた。さらにデータ収集時の放射線損傷の見積や微小結晶の位置調整（センタリング）を簡便化し、高効率にデータ収集が可能な自動データ収集システムZOO[1][2]の高度化と運用を行っている。これらを利用可能なビームタイム支援に加え、課題保有者が来所せずにスクリーニングやデータ収集を実現できるラピッドアクセス測定も提供している。利用者の負担を減らしビームラインの利用を簡便にすることにより、高難度試料の結晶化条件の最適化サイクルを短縮、さらに試料のサイズを問わず大量データ収集を利用した高分解能構造解析技術についても測定・解析支援を行っている。

２種の実験形態をサポート
1）来所データ収集　→　高難度試料の測定について実験および解析支援（自動データ収集を含む）測定プロトコル（１点露光データ収集、ヘリカルデータ収集、multiple small wedgeデータ収集、SSROX[3]などの測定スキームが利用可能）
2）来所なしラピッドアクセス　→　利用者から送付された結晶をZOOシステムを利用してスクリーニングおよびデータ収集を行う。タンパク結晶か否か、回折能の実測データをタイムリーにフィードバックする。

(参考)
[1] Hirata, K., et al., Acta Cryst.(2019) D75, 138-150.
[2] Yamashita, K., et al., Acta Cryst.(2018) D74, 441-449.
[3] Hasegawa, K., et al., J. Synch. Rad.(2017) 24, 29-41.

[3] 支援技術の利用例

本研究では体からの命令をうけとって血圧を上げるGタンパク質（エンドセリン受容体）に血圧を下げる薬ボセンタンが結合した構造解析を実現し、この成果で薬（ボセンタン）がなぜ作用するか（血圧が上がらなくなる）が解明されました。このような薬が作用するメカニズムを解明し情報を蓄積することでさらに効果のある薬剤の開発などが期待できます。

（参考）Shihoya W., et al. “X-ray structures of endothelin ETB receptor bound to clinical antagonist bosentan and its analog,” Nat. Struct. Mol. Biol., (2017) 24, 9, 758-764.

[4] 支援担当者の研究概要

SPring-8の光源性能を活用した高フラックス微小ビームの安定供給および測定技術の開発・高度化を行い、世界に先駆けて微小結晶を利用した高難度タンパク質結晶構造解析の道を切り拓いてきた[4][5][6]。自動データ収集および自動データ処理を提供し、多数の結晶を用いた解析についてのノウハウを蓄積することで、さらなる高効率測定に向けた開発研究を行っている。

（参考）
[4] Hasegawa, K., et al. J. Synchrotron Rad, 20 (2013), 910-913.
[5] Hirata, K., et al. J. Phys.: Conf. Ser., 425(2013), 012002
[6] Hirata, K., et al. Advanced Methods in Structural Biology, 5 ed., 22, Tokyo: Springer Japan(2016), 241-273.